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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)9762号 判決

原告

関本静

関本忠三

関本茂子

右三名訴訟代理人

藤井光春

被告

志賀高原観光開発株式会社

被告

竹節安司

右両名訴訟代理人

相沢岩雄

主文

被告らは、各自、原告関本静に対し金二、〇二九、一五七円 原告関本忠三に対し金九三、〇四二四、原告関本茂子に対し金一五〇、〇〇〇およびみぎ各金員に対する昭和三九年一月一日からみぎ完済にいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

原告らのその余の請求を棄却する。

訟訟費用は、これを四分し、その一を原告らの、その余を被告らの負担とする。

この判決は、原告関本静において金七〇〇、〇〇〇円の、原告関本忠三において金三〇、〇〇〇円の、原告関本茂子において金五〇、〇〇〇円の担保を供するときは、いずれも第一項に限り、各被告に対し、それぞれ仮りに執行することができる。

事実

第一原告らの申立て、

被告らは、各自、原告関本静に対し金三、三五六、四八〇円、原告関本忠三に対し金三九八、八三二円、原告関本茂子に対し金三〇〇、〇〇〇およびこれらに対する昭和三九年一月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

との判決ならびに仮執行の宣言を求める。

第二被告らの申立て

原告らの請求を、棄却する。

訴訟費用は、原告らの負担とする。

との判決を求める。

第三請求の原因

一、(一) 被告志賀高原観光開発株式会社(以下単に「被告会社」という。)(1)は、不動産賃貸業(2)旅館、山小屋、休憩所、貸ボート等観光遊覧施設の経営(3)食堂の経営、一時預り業および土産品陳列販売業(4)索道による旅館および貨物の運送業(5)自動車道路事業(6)以上各号に附帯する一切の業務を目的とする会社であつて、長野県下高井郡山ノ内町志賀高原東館山西斜面にスキーリフト二本(以下北側にあるスキーリフトを「第一リフト」、南側にあるスキーリフトを「第二リフト」という。)架設し、冬期、みぎ斜面のスキー場(第一、第二リフト間のスキー場を「高天ケ原スキー場」という。)におけるスキー客の運送をはかり、スキー場の管理経営を業として行つているもの。

(二) 被告竹節安司(以下「被告竹節」という。)は、被告会社の従業員で、パトロール要員として高天ケ原スキー場のパトロールの業務に従事していたものである。

二、(一) 被告竹節は、上記スキー場の管理スキー客の危険防止等のための巡察の業務に従事していたのであるから、スキー客の安全維持につとめるべき任務があり、特に、パトロール中はスキーの器具の形状、大きさならびにスキー運動の特殊性にかんがみ、スキーの速さ、方向をかえる等して危害の防止に特段の注意をはらうべき義務があるにかかわらず、昭和三八年二月二三日午前一一時ごろ、高天ケ原スキー場東館山頂から麓に向つてパトロール中、その任務を怠つて、自己のスキーに興じ、別紙高天ケ原スキー場図面中①地点で一旦停止し、好天のため前下方の見通しが十分で、すでに図面中④地点附近に転倒している原告関本静(以下「原告静」という。)を、右図面中①②③の各地点および①②③の各地点にいたる間で目撃しながら、これとの接触を避けようともせず、漫然、①地点から②地点に斜滑降し、②地点において③地点附近は危険標識の赤旗が立てられたコブ状の地形であつて、そこでは滑走は勿論ジヤンプなどを行つてはならないことを知りながら、③地点でジヤンプしようと思い、②地点から③地点に向け時速約七〇粁の速度で直滑降し、③地点において自己の技術を過信し、なんら監視員を配置することもなく④地点方向にジヤンプしたため、約一六、六米下方の地点において、転倒し起き上つて滑走の用意中の原告静の顔面をかすめるようにして、その顔面にジヤンプ中の左足スキーを激突させた(以下これを「本件事故」という)。

(二) 原告静は、みぎ衝突により頭蓋腔内出血、鼻骨複雑骨折、顔面裂創(涙線に傷害をうけた結果涙がとめどもなく流れ、特に鼻は一五針縫い合わせた)、右側眼外傷結膜出血、虹彩離断、硝子体出血の傷害をうけて転倒失神し、現在、なお、右眼失明、頭部外傷性癲癇をおこす危険性のある後遺症をうけている。

三、みぎの不法行為により、原告らが蒙つた損害はつぎのとおりである。

(一)  原告静の損害

(1) 得べかりし利益の喪失

(イ) 原告静は、昭和一四年三月一六日生れの二四才の女子であつて、本件事故によつて前記のような重傷を負い、顔面の外形に著しい醜状を残していることにより、爾後の労働能力に影響をうけていることは明らかであり、この点については労働基準局通牒別表の労働力喪失表によることが公平に適するものと考えられ、同表によれば、外貌に著しい醜状を残していることは同表第七級に、一眼失明は同表第八級にそれぞれ該当し、全体として第七級に該当し、労働能力喪失率は一〇〇分の五六とみるのが相当である。

(ロ) ところで、原告静は、本件事故当時、社団法人日本貿易会に月給制の事務員として勤務し、事故直前の昭和三七年一二月から昭和三八年二月までの間に臨時の賃金を除き合計金四六、一〇〇円を支給され、みぎ三ケ月の日数九二日でこれを除すると、原告静の一日の平均賃金は金五〇一円となり、満二四才の女子の平均余命は四八、六三年であり、少くとも今後四八年は生存し稼働しうべきであるからその得べかりし利益の喪失分を前記通牒の算式によりホフマン式計算方法にて中間利息を控除して計算すると

となる。(ただし、本件ではみぎのうち金一、三五六、四八〇円の請求をするものである。)

(2) 慰藉料

原告静は、東京都文京区元町二の一七私立松蔭学園高等学校を優秀な成続で卒業し、前記日本貿易会に勤務していたものであつて、前記のごとき傷害をうけたのみならず、昭和三九年五月一六日警察病院で自己の左肋骨の軟骨を切りとつて鼻部に移植する手術をうけたが、その移植した軟骨の一部が化膿してその成果も危ぶまれてることにより、婚姻適令の女子としてははかりしれない精神上の損害を蒙つたわけであるが、これを金銭に見積るとすれば金二、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。

(二)  原告関本忠三、同関本茂子の慰藉料

原告関本忠三、同関本茂子(以下「原告忠三」、「原告茂子」という。)は原告静の父母であり、本件事故の日にともに長野県中野市内北信総合病院にかけつけ、同夜医師から原告静の危篤を告げられ、同年三月五日止血に成功するまで危篤状態のもので看病し、同月一一日東大病院に転院して一命はとりとめたものの、その後も引き続き同病院外科、精神科、眼科、形成外科等で治療をうけさせたが、これら治療看護に際しての心労はもとより、結婚適令期にある娘に前記のような後遺症を与えられたこと、ならびにこれによる原告静のノイローゼ気味の態度によつて精神上の苦痛をうけたが、これを金銭に見積るとすれば、みぎ原告らの損害はそれぞれ金三〇〇、〇〇〇円が相当である。

(三)  原告忠三の財産的損害

上記のとおり、原告忠三は、原告静の実父で、その身分関係上当然生ずる扶養義務に基づき、別紙記載のとおり、合計金四〇三、三二四円の支出を余儀なくされたが、その出費はいずれも本件事故と相当因果関係にあるものと認められるから原告忠三は被告らに対しみぎ金員の損害賠償請求権を有する。

(四)  被告会社は、原告らに対し本件事故後見舞品金四、四九二円相当および見舞金として金三〇〇、〇〇〇円をおくつたので、みぎ金員を原告忠三の内入弁済に充当する。

四、よつて、被告竹節およびその使用者である被告会社に対し、原告静は前記損害額の合計金三、三五六、四八〇円、同忠三は前記損害額の合計金三九八、八三二円、同茂子は前記損害金三〇〇、〇〇〇円、およびこれら各金員に対する損害発生の日の後である昭和三九年一月一日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴請求をする。

第四被告らの答弁

一、(一) 請求原因第一項の事実のうち、被告会社の目的および被告会社が高天ケ原スキー場にスキーリフト二本を架設してその経営を行つていることは認めるが、その余の事実は否認する。被告会社は、リフトの経営を業とするにすぎず、スキー場の管理経営を行つているものではない。

(二) 同第一項(二)の事実は認める。

二、(一) 同第二項(一)の事実のうち、被告竹節が同項記載の日時に高天ケ原スキー場においてパトロール中、別紙図面地点におてい一旦停止し、②地点から③地点に向つて滑降し、③地点でジヤンプし、④地点においてそのスキーを原告静の顔面に衝突させたことは認めるが、その余の事実は否認する。すなわち、

(1)  パトロールの任務および服務内容は、(イ)スキー場を常に巡回し、乗客公衆の整理および乗降場、滑降コースその他の整備等の業務に従事すること、(ロ)索道の機械設置、乗客の塔乗態度等について注意すること、(ハ)スキー場に傷病患者が発生したときは、その状況に応じて安全かつ速やかに救護所へ運搬すること、(ニ)スキー場整理基準によりスキー場の利用について指導すること、(ホ)業務中常に所定の腕章を看けること(被告会社が所轄新潟陸運局に届け出たパトロール服務規定参照)であつて、原告らが主張するがごときスキー場の管理、スキーヤーの危険防止等のための巡察の業務に従事するものではない。

(2)  被告竹節は、事故当日、シユプール(スキー滑走の跡)をつけて滑降コースを整備するため、第一リフト終点から滑降をはじめ、①地点において一旦停止し、周囲、特に下方AB③④地点附近に注意を払い、AB③④地点附近に人影のないことおよびA地点附近よりB④地点方向に滑走してゆく人影のないことを確認したうえ(①②地点よりAB③④地点は見通しが可能である。)、ふたたび滑降をはじめ、②地点をとおつて③地点(③地点附近は、地形がコブをなしているのではなく雪の大きな塊りの上端であつて危険標識の赤旗が立てられていたことはなく、また、その附近で滑降又はジヤンプを行つてはならないということはない。また、②地点から③地点の間ではAB④地点附近の見通しはきかない。なお、この時の速度は時速約四〇粁である。)にいたつたところ、④地点に原告静が倒れているのを認めたので、同人に衝突することを避けるため身体をひねつてジヤンプしたが、その際原告静がたまたま首をもちあげたためスキーが接触したものである。

(二) 同第二項(二)の事実は知らない。

三、同第三項の事実のうち、原告忠三、同茂子が原告静の父母であることおよび被告会社が原告らに見舞品金四、四九二円相当と見舞金三〇〇、〇〇〇円をおくつたことは認めるが、その余の事実は知らない。

第五被告らの抗弁

一、本件事故は、スポーツに際して生じた事故であるから違法性が阻却される。

スポーツ、特にスキーには危険が伴う。すなわち、スキーは単独で行うスポーツであるが、ゲレンデ内のスキーについては(一)道路交通法のごとき取締法規がなく、衝突事故防止につき、適切な行政指導がなされていないこと(つまり、衝突事故防止について法律上野放しの状態であること)、(二)したがつて、技術程度の異なるスキーヤーが各自思い思いに滑走していること、(三)スキーは、自動車等の機械的装置の操縦と異なり、スキーの材質、柔軟度、製作形態、長短および巾、スキーの滑走面の処理(パラフインの種類、つけ方)、樹脂加工の種類、つけ方、エツヂの状態、スキーヤーの体重および技術、雪質、気温、雪温、天候、風圧(風向、風速)、地形、斜度等各種の要素の複雑微妙な結合作用により滑走状態にあらゆる変化を発生せしめ、スピード、進行方向、転倒等の予測が困難であること、(四)ことに斜面のゲレンデにおいてはみぎが顕著であること等により、各自がいかに注意しても衝突事故の絶無は期しがたく、スキーヤーは衝突の危険を容認して滑走しているものと考えられ、この考えは条理上社会的にも是認されている。したがつてゲレンデ内での事故は、それがスキーヤー相互間で発生した場合はもとより、スキーヤーとパトロールとの間で発生した場合でも、特段の事情がないかぎり、被害者において甘受すべきであつて加害者の行為は違法性を阻却するというべきである。

二、仮りに、被告竹節の行為に過失があつたとしても、被告会社は、同人の選任監督につき相当の注意をなしていたものであるから、本件事故につき、使用者としての損害賠償責任を免れるというべきである。

三、仮りに、被告竹節に過失があつたとしても、原告静にもまた過失があつたのであるから、本件事故による損害賠償額は、減額さるべきである。

すなわち、原告静はスキーの初心者であつて、東京スキー研究会のグループに属し、本件事故当日、高天ケ原スキー場において、グループで集団練習をしていたものであるが、高天ケ原スキー場は第一、第二リフトの乗降客が常時滑降してくるのでそこで集団練習をすることはきわめて危険である(このことは被告会社の従業員およびパトロールが再三注意を与えていた)ので、衝突の危険を防止するため、国立公園管理員により第一リフト北方に高さ約二米の標識二〇数本を立てて、集団練習場が指定標示されていたのであるから、その指定地において練習すべきであり、また、このような状況から高天ケ原スキー場で練習するとしても斜滑降をすることは危険であるので、これを避け、仮りに斜滑降するとしても、上方より滑降してくるスキーヤーの有無を確かめ、さらに雪庇の陰にいたることは、上方より滑降してくるスキーヤーの見通しがきかず、これと衝突する危険が増大するわけであるから厳にこれを避けるべき注意義務があるにもかかわらず、原告静はこれを怠り、集団練習指定地でない高天ケ原スキー場の別紙図A面地点東南方において集団練習をし、かつ、A地点方向から④地点方向に向け、上方に注意することなく斜滑降し、④地点附近の雪庇の陰にいたつて転倒したため本件事故が発生するにいたつたものである。

第六被告らの抗弁に対する原告らの答弁

一、抗弁一は争う。スポーツ事故といえども故意又は過失によつて相手方の身体に傷害を与えるときは、当然不法行為が成立し、その責任を免れないことはいうまでもない。

二、同二の事実は否認する。

三、同三の事実は否認する。原告静は、スキーの初心者でなく、二級の資格を有するスキーヤーである。また、本件事故当時は、すでに集団練習を終り、各自自由に練習していたものであるから、集団練習場で練習しなかつたことと本件事故発生とは直接に関係がない。また、被告らは、ゲレンデを斜滑降するスキーヤーは、上方より滑降してくるスキーヤーの有無を確かめるべき注意義務があると主張するが、ゲレンデにおいて斜滑降は、常時行われるのであるから、むしろ本件のごとく、事故防止等を任務とするパトロールが非常に危険を伴うジヤンプをする場合には、そのパトロールこそ、下方をよく確かめるべき業務上の注意義務があるのであつて、被告らが原告静の過失を云々するのは、正にこの逆をいうものであつて当を得ない。

第七証拠関係<省略>

理由

第一  争いのない事実

第二  被告竹節の不法行為

一  本件事故現場の状況

二  原告静の本件事故に遭遇するまでの行動

三  被告竹節の本件事故にいたるまでの行動

四  原告静の転倒と被告竹節の滑降との時間的関係と見通し

五  被告竹節の過失

第三  被告らの違法性阻却の抗弁(スポーツ事故)

第四  被告竹節の責任

第五  被告会社の事業とパトロール

第六  被告会社の免責の抗弁(選任監督)

第七  被告会社の責任

第八  損 害 額

一  原告静の傷害の程度

二  原告静の損害額

(一)  得べかりし利益の喪失

(二)  慰藉料

三  原告忠三、同茂子の損害額

(一)  原告忠三の財産的損害

(二)  慰藉料

第九  被告らの過失相殺の抗弁

第一〇  結 論

第一争いのない事実

被告会社が長野県下高井郡山ノ内町志賀高原東館山西斜面にスキーリフト二本(北側にあるスキーリフト・「第一リフト、南側ににあるスキーリフトを「第二リフト」という。)を架設してその経営を行い、スキー客の運送を営なんでいたこと、みぎ第一、第二リフト間のスキー場を高天ケ原スキー場ということ、被告竹節が被告会社の従業員でパトロール要員であつたこと、被告竹節が昭和三八年二月二三日みぎ高天ケ原スキー場をパトロール中、午前一一時頃、第一リフト南側で原告静の顔面に衝突したことはいずれも当事者間に争いがない。

第二被告竹節の不法行為

一  本件事故現場の状況

<証拠>を総合すれば、本件事故現場は高天ケ原スキー場所在の被告会社高天ケ原事務所を起点として第一リフト頂上寄り約四五〇米、同リフト第一五号支柱と第一六号支柱の間にある中間降り場の南側斜面であつて、みぎ斜面の第一リフトから南へ約一〇数米のところには、吹き下ろす風と吹き上げる風の作用によつて毎年のように雪の吹きだまりができて、いわゆる雪庇が形成されていたが、スキーヤーのなかには、みぎ中間降り場で降りて、ゲレンデに出るために、みぎ降り場から南に向けてみぎ雪庇の上を往来するものが多く、したがつてみぎ雪庇の東側、頂上寄りが自然に踏み固められて道のようになり、それが雪庇の上端から約一三米位のくぼみとなつていたため、雪庇の先端は、かなり上方を向いていたこと、また、第一リフト第一七号支柱の南側頂上寄りは平坦ではあるが斜度がやや急で二〇度位あり、第一五号支柱の南側麓寄りは斜度がややゆるく一五度位で平坦であるのに比してみぎ雪庇の上方頂上寄り三、四〇米の間は斜度も急でほぼ二〇度ないし二五度位もあり、しかも雪面が平坦でなくて凹凸があり、また、附近には木の切株があつて赤旗が立てられていたこと、したがつて一般のスキーヤーが、みぎの斜面を滑走することはきわめて少なく、事故当日は、そこにシユプールがなかつたこと、また、みぎ斜面を雪庇に向つて滑走すれば、そこで自然にジヤンプしなければならないような地形であつたこと、そして本件事故当時、高天ケ原スキー場は快晴で風もなく、一般的な見通しは良好で、積雪は二米ないし三米位もあつたことが認められ、<証拠>のうちみぎ認定に反する部分は採用できず、他にみぎ認定を左右する証拠はない。

二  原告静の本件事故に遭遇するまでの行動

<証拠>によれば、東京スキー研究会は全日本スキー連盟に所属する東京都スキー連盟に加盟しているスキー愛好者の団体であつて、昭和三八年二月二二日から三日間の予定で志賀高原において、その会員中約一〇一名のために、会員をその技能等に応じて七段階にわけ、初心者をのぞく六段階の班に対しては高天ケ原スキー場においてスキーの講習を行つていたが、みぎ研究会の会員である原告静は、その技能が全日本スキー連盟バツヂテスト二級程度なので、中級の上のグループに属してみぎ講習会に参加し、事故当日は、与安康二指導の下に第二リフト上方(第一リフトと第二リフトの各終点のほぼ中間地点附近)の林の近くで練習をしていたが、午前一一時少し前、午前の講習がおわりそこで解散となつて昼の自由時間となつたので赤いアノラツクを看てそこからほぼ北西に向けてゆつくり斜滑降を始め、第一リフト第一六号支柱の南南西約四〇米の地点(以下これをA地点という。)附近を経て、同地点から北西に約二八米、第一四号支柱から南へ約一六、六米の地点(以下これを④又はB地点という。)附近にいたつたとき約一〇糎位積つていた新雪に突入して転倒し(原告静がA地点方向から④地点に向けて斜滑降し④地点で転倒したことは当事者間に争いがない。)尻もちをついたので、顔を西側山麓の方向に向けながらおき上ろうとして体を左にひねつて自分が滑つてきた地点方向を振り向いた時、たまたま上方からジヤンプしてその附近にさしかかつていた被告竹節の左足のスキーがその顔面に衝突したものであること(被告竹節のスキーが原告静の顔面に接触したことは当事者間に争いがない。)そして原告静が転倒してから自分のコースを振り返るまでは約一〇秒近くの時間がかかつてその間もたもたしたとみられるような状況であつたことが認められ、<証拠>のうちみぎ認定に反する部分は採用できず、他にみぎ認定を左右する証拠はない。

三  被告竹節の本件事故にいたるまでの行動

<証拠>を総合すれば、被告竹節は、地元山ノ内町の出身で子供の頃からスキーをやり、昭和三五年三月全日本スキー連盟バツヂテスト一級に合格し、志賀高原高天ケ原スキー大会の大回転、回転などでは優勝したこともある相当高度の技能の持主であり、昭和三五年以来一二月一〇日頃から翌年の四月一〇日頃まで毎年被告会社に勤務し高天ケ原スキー場のパトロールの業務に従事していたので(被告竹節がパトロールの業務に従事していたことは当事者間に争いがない。)高天ケ原スキー場の前記の状況、特に前記認定の中間降り場附近には雪庇がありそこを滑降するときは自然にジヤンプする場所であることも熟知していたこと、しかしし被告竹節は事故当日の朝被告会社の取締役でスキー場の業務監督の職にある佐相富康から命ぜられて第一リフト中間降り場附近のコースへシユプールをつけるため、午前一一時頃第一リフト終点(東館山山頂)附近から同リフト第一八号支柱の南にあるブナの大木の南側をとつてパトロールをしながら滑降中、みぎブナの木の近くに顔見知りのスキー客が二、三人いたのでみぎブナの木の西南西約二六米、第一八号支柱の南西約五〇・七米の地点(以下これを①地点という。)で一旦停止し(①地点で一旦停止したことは当事者間に争いがない。)、その者らと簡単な挨拶をかわした後第一リフト添いの下の方を見渡したが、人影が見えなかつたのでそのまま北西に向けて斜滑降し、①地点から北西へ約二七・八米、第一七号支柱の南方約二二・七米の地点(以下これを②地点という。)において西方へ方向をかえ(②地点で向きをかえたことは当事者間に争いがない。)、同地点において中間降り場からゲレンデにはいつてくるスキー客およびその下方にも人影が見えなかつたので、前記雪庇の上でジヤンプしようと思つて、直ちに目の高さ雪上約八〇糎位に腰を落として少くとも平均時速五〇粁を下らない速度で直滑降し、雪庇の上、第一六号支柱から西南に約一七・五米、第一五号支柱から南南東に約一七・三米の地点(以下これを③地点といい、②地点から約四九米下方である。)でジヤンプし(③地点附近でジヤンプしたことは当事者間に争いがない。)その際、同地点から約一六・六米(垂直距離で約一・七米位)下方の前記④地点に転倒している原告静の姿を発見し、危険を感じてこれとの衝突を避けようとして体をひねり足を開くなどしたが、およばず、左足に看用していたスキー(木製で長さ二・一米、重量約七〇〇匁)の先端を原告静の鼻、右眼に順次接触させるにいたつたことがそれぞれ認められ、<証拠>のうちみぎ認定に反する部分は採用できず、他にみぎ認定を覆えすに足る証拠はない。

四  原告静の転倒と被告竹節の滑降との時間的関係と見通し

前記認定の事実と検証の結果を総合すれば、被告竹節が、②地点で停止することなく前方を一見しただけで直ちに下方へ方向をかえ直滑降に移つたのであるから、②地点から③地点にいたる約四九米の斜面を滑降するのには多くとも五秒位しかからず、また③地点から④地点までジヤンプするのには約一秒位しか要せず、一方原告静は、A地点方向から④地点にいたるまでゆつくり斜滑降し、転倒してからおき上ろうとするまでもたもたしていたとみられるような状況であつたことからみれば、被告竹節が、遅くとも②地点に達していた時には原告静は④地点又はその附近に達していたものと推認れさ、被告竹節がよく注意をすれば、遅くとも②地点において、④地点に転倒していたか又はその附近に斜滑降してきていた原告静の姿を発見することができた(このことは<証拠>によつて明らかである。もつとも②地点から④地点が見通せることは当事者に争いがない。)ことが認められ、他にみぎ認定に反する証拠はない。

五  被告竹節の過失

以上認定の事実と<証拠>を総合すれば、上記のような状況の下で地点方向から滑降して地点の雪庇においてジヤンプしようとする者はジヤンプの際又は、その直後に前方スキーヤーを発見してこれとの衝突を避けるためスキーの方向をかえようとしても加速度のついた状態で咄嗟の間に適切な避譲措置をとることはきわめて困難なことであり、また②地点から③地点にいたる間はくぼんだ個所もあつて、殊に加速度をつけるため体勢を低くした場合には前方を注視することは不可能であり、さらにまたゲレンデ内において午前一一時頃にはスキーヤーの数も多くなつているので、いつスキーヤーが自己のジヤンプしようとする進路に向つて滑走してくるかも分らないのであるから、ジヤンプするための滑降体勢にはいるにあたつては、まず十分の見通しのきく場所において前方および左右の状況を確かめるか、又は見張りの者を立てる等して自己のジヤンプしようとする進路に向つて滑走してくる者がないことを確認すべき注意義務があり、殊にスキー場のパトロールに従事する者は、みぎにとどまらず滑走コースの整備のためシユプールをつけるにしても、つとめてジヤンプを避け、たとえジヤンプするにしても、これを行う時を選択する等して危害の予防について一層の注意を払うべき義務があるというべきである。しかるに、被告竹節は、これを怠り、時を選ぶことなくジヤンプを敢行しようとし、前記のように②地点において④地点に対する見通しが十分できるにかかわらず、下方に対する注意をせず、見張りの者をもおかず、そのためその頃④地点又はその附近にいた原告静の姿に気付かず、漫然と下方には人がいないものと軽信して、②地点において雪庇の上でジヤンプしようと決意し、②地点から③地点に前記のような低い姿勢で滑降し、③地点においてジヤンプしたため、その際前方に原告静が転倒しているのを発見してこれとの衝突を避けようとしたが、ついにおよばず、その顔面に衝突するにいたつたもので、被告竹節のみぎ行為は、パトロールの職務を忘れ自己のスキーに興じたものというべく、本件事故の発生は、同被告の重大な過失によるものといわなければならない。

第三被告らの違法性阻却の抗弁(スポーツ事故)

およそ、スポーツやゲームに参加する者は、加害者の行為がそのスポーツやゲームのルールないしは作法に照らし、社会的に許容される底の行動であるかぎり(したがつて、故意又は重過失による行為は含まれないことはいうまでもない。)そのスポーツやゲーム中に生ずる通常予測しうるような危険を受認することに同意しているものと解する。けだし、法によつて禁止されているスポーツは別として、一般にスポーツは、国民が健康で文化的な生活を営むうえに有意義なものであるので、法は、このようなスポーツを優遇し、それに伴つて生ずる事故が、みぎのような社会的に容認される程度のものであるときは、その原因を追及して不法行為責任を問うたりしないものというべきであるからである。そして、このことは、スキーのごとくその本来の性質からすれば個人的で完全に独立なスポーツであつても、多数の集合するゲレンデにおいて行われる場合には、これに参加するスキー客についても同様であるというべきである。したがつてスキー事故も他のスポーツ事故同様に、みぎの限度におろてのみ違法性が阻却され、この限度を起える場合には、違法性は阻却されない。

これを本件についてみれば、上記のとおり被告節は、いわゆるパトロール要員としてパトロールの業務に従事中、重大な過失によりそれとは全く別のコースを斜滑降してきて自己の進路上に転倒した原告静に気付かずに、あえて雪庇の上でジヤンプするというようなきわめて危険な行為に出て、そのため、原告静に対して後に認定するような重傷害を与えたのであつて、被告竹節のみぎ行為は、その作法と過失の程度において到底社会的に容認されうるものではないというべく、また、それによつて惹起された傷害も上記の程度をはるかにこえるものである。したがつて、本件事故がスポーツ中の事故であることを理由とする被告らの違法性阻却の抗弁は、採用することができない。

第四被告竹節の責任

以上の次第で、被告竹節は、原告静に対し本件事故について不法行為上の責任を負うことが明らかであるから、原告静および同人の父母である(この点は当事者間に争いがない。)原告忠三、同茂子に対し本件事故によつて生じた損害を賠償する義務がある。

第五被告会社の事業とパトロール

<証拠>を総合すれば、高天ケ原スキー場は、上信越国立公園志賀高原の一部で、その保護または利用のための規制または施設に関する計画に基づく事業(国立公園事業)は国が執行すべきものであるところ、被告会社は、みぎ高天ケ原スキー場および事務所の敷地をその所有者である財団法人山ノ内町和合会から、賃貸借しみぎのリフト周辺の土地約三町歩は被告会社および一般利用者に開放することを目的で使用貸借し、自然公園法一四条三項により昭和三五年一〇月厚生大臣の許可(この許可をうけるについては土地所有者の承諾書を要する。)をうけ、また、リフトの架設については運輸省令索道規則に基づき、同年一二月、新潟陸運局長の免許をうけて自然公園法二条六号、同法施行令四条五号、七号所定のスキー場事業およびリフトによる運送事業を経営している者であること、そしてみぎスキー場事業については自然公園法施行令九条によつて国立公園事業の管理又は経営の方法を定めて届け出ることを要求されているので概括的な管理の方法を定め、その中でパトロールの任務や服務を定め、またリフト事業については、索道規則一四条の二によつて索道係員の職制、服務および懲戒に関する規則を定め、その中でパトロールについても規定を設けていること、そして、これらの定めにしたがつて被告会社では、その事業を行うためにパトロール要員をおいて、スキー場内の巡回、滑降、コースの整備、リフト乗降客の整備、無理なコースを選ぶスキーヤーの指導、負傷者が出た場合の救護等の業務に従事させていたことが認められ、他にみぎ認定に反する証拠はない。

第六被告会社の免責の抗弁(選任監督)

被告会社は、被告竹節の選任監督につき相当の注意をなしたと主張するが、<証拠>を総合すれば、被告会社は他の従業員と同様にパトロール要員を採用するに際しては、履歴書と面接だけによつてその採用を決定し、もつとも、パトロールの責任については地元のリフト事業を経営する会社で組織されている索道協会の議にかけられるが、それも抽象的に品行、性質、スキーの技術等に着目するだけで特にパトロールについて特別の資格や能力を要求せず、被告竹節をパトロールするについても同様であつたこと、そして、その職務上の監督についても、佐相取締役らがパトロール(被告竹節を含め三名)に対し、ゲレンデでスピードを出しすぎないよう注意したほかは、もつぱらコースの整備、リフトの乗客の整理、事故が発生したときの措置などその職務の内容について指示を与えるにとどまり、ジヤンプについてはなんらの注意を与えなかつたことが認められ、他にこれに反する証拠はなく、かえつて、<証拠>によれば、パトロールの中にはスキー客に見せるためにことさらにスピードを出す者がいたこと、また、<証拠>によれば、被告竹節は本件事故の前日の昼頃ゲレンデで大回転の競技の練習をしていたことが認められるから、被告会社が被告竹節の選任監督につき相当の注意をなしたもののは到底認めることができない。

けだし、被告会社のスキー場事業のように人身の危険を防止し、客に対して安全を保障することが要求されている事業(殊に、近来、スキー人口が著しく増加し、技術程度の異なるスキーヤーが各自思い思いに滑走する状況でスキー場における危険の増大が懸念されている。)を経営する者は、本件事故のごときスキー事故が発生した場合、企業の危険責任として直接被害者に対し不法行為責任を負うべきか、あるいは、スキー場の一般利用客に対し契約責任を負うことになるか否かは別として、特に従業員なかんづくパトロールの選任、監督については、高度の注意が要求されているというべきである。したがつて、この点に関する被告会社の抗弁は採用の限りではない。

第七被告会社の責任

前記認定のように、被告会社は、その事業を行うためにパトロールの服務を定め、しかして被告竹節が被告会社に使用されているパトロール要員であることは当事者間に争いがなく、また、被告竹節が、被告会社の佐相取締役から命ぜられてパトロールとしてコースにシユプールをつける業務に従事中、本件事故を起したものであることはすでに認定したとおりであるから、被告竹節は、被告会社の事業の執行につき原告静らに損害を与えたことが明らかであり、したがつて被告会社は、民法七一五条により、被告竹節が原告静らに与えた損害を賠償する義務がある。

第八損害額

一、原告静の傷害の程度

<証拠>によれば、原告静は、本件事故により、その場に転倒失神し、当時の目撃者の言葉によれば「鼻がめくれて血の固まりみたいなものが押し出されているという感じ」の傷害をうけ、ただちに発哺温泉の旅館薬師の湯前の診療所へはこばれ、同所で応急処置はしたものの、生命が危険な状態であつたので、さらに中野市の北信総合病院にはこばれ、そこで意識不明のまま、止血、輸血、酸素吸入を続け、一時は医師より危篤が告げられたが、二六日の夕方になつてようやく一命をとりとめたこと、その後、鼻を一五針縫い合わせる治療をうけたが、当時は頭蓋内出血、鼻骨複雑骨折、頭面特に鼻部裂創、右側眼外傷結膜出血、虹彩離断、硝子体出血の傷害で絶対安静の状態であつたこと、同年三月一一日、ようやく絶対安静の域を脱して転院可能となつたので、東京大学医学部付属病院に転院し、脳外科、眼科、耳鼻科、皮膚科、形成外科等の治療をうけたが長期の入院ができないので、同月二三日退院したこと、その後、桜井クリニツク分室で治療をうけ、さらに同年五月二六日から二九日まで警察病院において自己の肋骨の軟骨により、鼻骨の形成手術をしたが、現在なお、みぎ外鼻は変形したままでその手術の跡が化膿し、右眼は失明し、頭部外傷性癲癇をおこす危険性があり、また涙腺傷害のためとめどもなく涙が出るなどの後遺傷害が残つていることが認められ、他にみぎ認定に反する証拠はない。

二、原告静の損害額

(一)  得べかりし利益の喪失

<証拠>によると、原告静は本件事故当時、二三・九才(昭和一四年三月一六日生)の健康な未婚の女子であつて、私立桜蔭学園高等学校卒業後、社団法人日本貿易会に勤務して昭和三七年二月分として月給金八、八〇〇円出勤手当金二、三〇〇円物価手当金四、六〇〇円合計金一五、七〇〇円を得ていた者であるが、本件事故発生後ただちに退職のやむなきにいたり、みぎ収入を失うにいたつたことが認められ、他にみぎ認定を覆すに足る証拠はない。よつてまず、原告静が本件事故により前段認定のごとき傷害をうけ、それによつてうけた労働能力の喪失の程度につき考えるに、労働基準法施行規則別表第二身体傷害等級表および労働基準局長通牒(昭和三二年七月二日基発五五一号労災保障法二〇条の規定の解釈について)別表労働能力喪失表による基準は、労働者の災害による多数の傷害を格付けして、その労働能力の喪失率を明らかにしたものとして、特段の事情のない限り、これに依拠するのが相当であると解されるところ、前段認定の原告静の顔面の傷害が同表第七級にいう「女子の外貌に著しい醜状を残すもの」に該当するかについては、原告忠三本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第六号証によつてもいまだこれを認むるに十分とはいえず、他にもこれを肯認すべき証拠がなく、結局、原告静の傷害は、同表第八級にいう「一眼失明」の場合に該当するというべく、同表により、その労働能力喪失率は、一〇〇分の四五と認めるのが相当であり、他にこれを不当とすべき特段の事情は見当らない。

つぎに、原告静が本件事故当時、職業をもつ未婚の女子であつたことは上記のとおりであるが、一般に有職未婚の女子が余命又はそれに近い年数の間その職場に勤務(ちなみに、後記統計年鑑によれば、全産業の女子の平均勤続年数は四・〇年である。)し、その収入を得ることは、近時における有夫婦人労働者の増加を考慮に入れてもなお通常ではなく、むしろ女子の場合は、特段の事情なきかぎり、結婚適令に達した頃に結婚し、およそその頃退職して家庭の人となり、その後はいわゆる家事労働にたずさわるものと認めるを相当とし、そして、その労働力は通例一般女子の平均労働賃金に相当する収益を得べき見込あるものとして評価するを相当とする。

ところで、女子は平均して二四・八才で結婚すること、二四才の女子が平均してなお四八、六三年の余命をもつこと、そして女子の労働者の月間きまつて支給される給与額の平均が金九、八九一円であることは、厚生省大臣官房統計調査部発行昭和三七年人口動態統計(上巻)および総理府統計局発行昭和三七年度日本統計年鑑によつて公知の事実であり、稼動可能期間については、男女共統計に見るべきものがないが、現在の労働市場における男子の労働者の稼動可能期間との比較権衡上、女子の労働者の稼動可能期間も余命の範囲内である五五才までと認めるを相当とする。

そうすると、原告静の場合、<証拠>により、本件事故当時婚約がなかつたことが認められるから、本件事故がなかつたならば、なお一年間は、日本貿易会に勤務し、一ケ月金一五、七〇〇円(原告らは日給額を算定して計算するが、原告静が月給制により収入をえていた以上、前記最後の月給額を基準とするのが妥当である。)の収入をえ、その後は、結婚、退職して余命の範囲内で五五才まで少くとも三〇年間は家事労働に従事して女子の労働者の平均賃金一ケ月金九、八九一円相当の収入を得べかりしものであつたところ、本件事故によつてその労働能力の一〇〇分の四五を失つたのであるから、その得べかりし利益の喪失額は、本件事故当時に一時にそれをうけるとすると、各月の得べかりし収入(最初の一年間は、一ケ月金一五、七〇〇円、その後の三〇年間は一ケ月金九、八九一円)にみぎの四五%を乗じた金額から一年間民事法定利率年五分の割合による中間利息をホフマン式計算により控除した金額の合計金一、〇二九、一五七円となり、原告静に他の一般女子と異る特段の事由があつたとする主張も立証もない本件においては、みぎ合計金額をもつて、本件事故による原告静の得べかりし利益の喪失額と認めるを相当とする。算式で示めせば次のとおりである。

(二)  慰 藉 料

<証拠>によれば、原告静は、上記のとおり高等学校卒業後、日本貿易会に勤務し、スキーを好む健康な女性であつたが、本件事故にあつて上記の痛ましい傷害をうけ、いまだ治療中でその見通しも全く立たないため、現在では日常生活が著しく制約されていることはもとより、社会的活動は全く不可能の状態にあつて、今後、形成手術や治療を継続したとしても、右眼失明や顔面の傷痕などはもはや回復することはできず、これを措くとしてもその他の点で日常生活に支障がないまでに回復しうるかどうかもきわめて疑わしく、その上、なにかというと死にたいと言い、人目を避けて法廷にも出頭することさえきらう心境であることが認められ、婚姻前の女子として、将来一般の女子と同じように幸福な結婚生活に入り、妻となり母となつてせめて人並みの家庭生活を送る希望さえ全く断たれ、失意の中に苦悩しているものと推察するにかたくない。

そしてかような悲惨な精神的損害が前記のとおり被告竹節の重大な過失行為もしくは被告会社の選任監督上の重大な不注意に起因すると認められる以上、その慰藉料の額は相当多額であつてしかるべきであるが、しかし、不法行為責任における損害の賠償は、究極において負担の公平を目標とすることにかんがみ、加害者側の資産、その他の事情をも考慮すべきところ、<証拠>によると、被告会社は、資本金三、五〇〇万円の観光会社であつて、前示事業のほか手広く観光事業を営む者であり、被告竹節は、農業を営み、季節的にスキー場のパトロール要員として働く二三才の青年であること、ならびに本件事故後、被告竹節は、ただちに原告静の救助にあたり、同女を病院へはこび、北信総合病院において手術に立ち会うなどし、その後も被告竹節やその家族および被告会社の重役らが交互に北信総合病院に原告らを見舞い、また被告竹節は東京の原告らの自宅を訪れて自己の行為を詫びて反省の態度を示したことが認められるから、以上の事情を総合考慮して原告静の慰藉料の額は、金一、〇〇〇、〇〇〇円を相当と認める。

三、原告忠三、同茂子の損害額

(一)  原告忠三の財産的損害

原告忠三の財産的損害は、合計金二四七、五三四円であり、その根拠は、次のとおりである。

(1) 原告静の医療費

<証拠>によると、原告忠三が本件事故による原告静の医療費として、別紙記載(1)医療費(イ)ないし(ホ)の金員を支出したことが認められ、みぎ金員はいずれも本件事故と相当因果関係をもつことが明らかである。

(2) 物品購入費

<証拠>によると、原告忠三が別紙記載(2)物品購入費(イ)ないし(ニ)の金員を支出したことが認められ、みぎのうち(ハ)のサングラスは、失明のため小さくなつてゆく原告静の右眼を通常人の眼のようにみせる特種な眼鏡であつてその購入費は、本件のごとき事情のもとでは通常の損害として相当因果関係が認められるが、(イ)のうち、マツトレス、シーツ等および(ロ)の寝具、寝巻、羽織、着物は、原告静が北信総合病院および東大病院へ入院するため購入したものであつて、退院後もなお使用できる状態で残存していることが明らかであるから、その残存率を八割とし、その差額である各金員の二割(金五、二三四円)を本件事故による損害と認めるのが相当である。しかし、その余の(イ)のうち小物類必要品、(ニ)の日用小物についてはその中には入院治療に必要不可欠なものがあることは推測できるけれどもその具体的な品目や数量、価格が明らかでなく、本件全証拠によつても、どの範囲において本件事故による損害として相当因果関係があるかが明らかでないから、これらを損害として計上することはできない。

(3) 看護人への日当および謝礼

<証拠>によると、原告忠三が北信総合病院および東大病院において原告静の看護婦や付添人らの費用および謝礼として、別紙記載(3)看護人への日当、謝礼の金員を支払つたことが認められ、原告静のごとき重症者の入院につき付添人、看護人を要するのは当然であつて、これらの者に対して謝礼、心付ないしは車代などを支払うことは、社会常識の認めるところであり、かつ前記各金員を原告静の傷害の程度や入院日数と対比してみるといずれも相当なものであると考えられるから、みぎ金員はこれを本件事故と相当因果関係のある損害と認める。しかし、みぎ金員のうち別紙記載(3)(ロ)ないし(ニ)の原告ら家族の看護日当については、<証拠>によればそれぞれ別紙に記載の日数を看護したことは認められるけれども、原告忠三がみぎ家族の者に現実にこの種の金員を支出したことを認むべき証拠はなく、のみならず、扶養義務者が被害者の付添をして、得べかりし利益を失つたのは、本来他に付添費を払うべきことの代りであるから、その付添が客観的に必要とされる場合に限られると解すべきところ、すでに他に付添人、看護者の付されていたことは原告忠三の自認するところであるし、また同人がいずれも、当日、原告静とともにスキー場へスキーをするためにきていたことは、後記認定のとおりであるから、みぎの損害を本件事故なかりせば生じなかつたであろう損害として認めることができず、また別紙記載(3)の(ホ)(ヘ)の謝礼金については、原告忠三がたとえみぎ金員を支払つたとしても、<証拠>によれば、関順次、関要吉らが付き添つたりしてくれたのは同人らの好意に出たものなることが認められ、同人らに対する謝礼金は、別個の事由に基づくものであるから、本件事故と相当因果関係があるとはいいがたく、別紙記載(3)の(ロ)ないし(ヘ)の金員は、いずれも損害として計上することはできない。

(4) 交 通 費

<証拠>によると、原告忠三が原告静の東大病院、警察病院への入退院および尾本眼科への通院費として、別紙記載(4)交通費(イ)ないし(ハ)の金員を支出したことが認められ、原告静の傷害の程度から考えれば、みぎ病院への入退院、通院のためタクシーを利用することは通常の経費として容認されるところであるから、みぎ金員はいずれも本件事故と相当因果関係があると認められるが、しかし別紙記載(4)の(ニ)にある家族と見舞客の上野、湯田中間の急行二等料金については、原告忠三がみぎ金員を支出したとしても、<証拠>によれば家族中妻茂子、長男毅、二女性はすでに本件事故前から志賀高原に来ていたことが認められるから、東京へ帰京する費用は、本件事故がなくとも必要とされるものであり、また、原告静が医師から危篤を告げられたことは前記認定のとおりであるが、この事情を考慮して、その他の家族および見舞客の交通費のうちどの部分が本件事故と必然的な関係をもつものであるかは明らかでないので、みぎ金員を本件事故による損害として計上することはできない。

(5) 通 信 費

<証拠>によると、原告忠三が、本件事故を東京の自宅等へ知らせたり東京からの連絡のために要した電話料として、別紙記載(5)通信費(イ)(ロ)の金員を支出したことが認められ、本件のごとく事故現場が特殊の場所であり、しかも自宅との距離が離れているときはその連絡のための電話の費用を要することは一般に予想されるところであるから、みぎ支出は、いずれも本件事故と相当困果関係があるものと認めることができる。

(6) 医師への謝礼

<証拠>によると、原告忠三が原告静の担当医師に対する謝礼として別紙記載(6)医師への謝礼(イ)ないし(チ)の金品を贈与したことが認められ、一般に病院等に入院して大手術をしたりしたときに患者側でその相当医師に対し謝意を表して金品を贈ることは通常儀礼として行われるところであつて、原告静の受けた傷害の程度を考えると原告忠三の支出した金品の額は決して一般会社の通例に照して不相当なものではないから、みぎ支出は、いずれも本件事故と相当困果関係があると認めるを相当とする。

(7) その他の病院関係者らへの謝礼

原告忠三が原告静入院の病院関係者への謝礼として別紙記載(7)の金員を支出したとしても、入院、治療等に際して医師、付添人、看護婦以外の病院関係者に金員を贈ることは一般に儀礼的な行為として必ずしも通常認められているとはいえず、また、原告静が入院するに際して特に紹介者を必要とするとの特段の事情も認められない。したがつてこれらの支出を損害として計上することはできない。

(8) 見舞客への接待費

原告忠三が原告静の見舞客への接待費として別紙記載の金員を支出したとしても、見舞客の接待費なるものは、人間社会における風習又は儀礼としてなされる好意に対する返礼であつて、別個の原因に基づくものであるから、みぎ支出を本件事故による損害として計上することはできない。

(二)  慰 藉 料

被害者が死亡にいたらない傷害をうけた場合にも、本件のごとく、その父母がそれによつて損害をうけたことが主張立証されれば、民法七〇九条、 七一〇条に基づき、父、母もまた独立して慰藉料の請求ができると解すべきところ、原告忠三本人尋問の結果によると、原告忠三と同茂子の間には六人の子供(うち、長女および男二人は独立別居)があり、原告静はその三女で父母と生計を共にしてなお扶養されているものであること、そして原告忠三と同茂子は、本件事故当日、志賀高原スキー場にスキーをするためにきていて、原告静の事故を知り、北信総合病院において危篤状態にあつた同女に付き添つて連日看病し、その後も原告静をして前記のごとく東大病院等で治療をうけさせたが、現在なお、前記のとおりの後遺症があり、しかもその態度が陽気になつたり、ノイローゼ気味になつたりして、その性格に変化を来たしたのではないかとの不安も大きく、そのため、原告静が将来世間なみの結婚生活に入つたり、就職したりして幸福な人生を送ることについては殆んど絶望的であつて、人の親として深刻な精神的苦痛をうけていると認められ、原告静を抱えて生活を続けていかなければならない苦悩は推察するにかたくない。よつてみぎの事情ならびに原告静の慰藉料の判断につき考慮した事情を総合考量して、原告忠三、同茂子の慰藉料の額は、各自金一五〇、〇〇〇円を相当と認める。

第九被告らの過失相殺の抗弁

一、被告らは原告静がスキーの初心者であり、集団練習場が指定されていたにもかかわらずそこで練習をしなかつた過失が本件事故発生の一因である旨主張するから、まず、この点について判断するに、<証拠>によれば、厚生省の技官である国立公園管理員が昭和三六年以来地元の関係団体を招集して施設の整備および事故予防対策について協議した結果、高天ケ原スキー場第一リフトの北側中間降り場附近までの山麓斜面に集団練習場を指定し、同所にその旨を記載した縦六〇糎、横二米位の標識や「スキー講習会指定地」と記載した縦二〇糎、横四〇糎位の標識二〇本位を設置し、また、スキー講習会を行うには事務所に届け出ることを決め、これらのことを観光協会ニユース、志賀高原観光協会々報等に記載して地元の旅館、寮等に配布し、各旅館や寮等ではみぎの趣旨を掲示してスキーヤーに周知させるようにしていたこと、しかしこれが徹底せず、本件事故当日も第一リフト南側で東京スキー研究会のグループが集団練習をしようとしたので、被告会社のパトロールが同グループの指導員である坪野昌平に対しては集団練習場で練習するよう注意したが、これが守られなかつたこと、また、与安康二を指導員とし、原告静らの属するみぎ研究会のグループも集団練習場を利用せず、地点南方において講習をしていたことが認められ、他にみぎ認定に反する証拠はないから、もし、それにもかかわらず、本件事故のごとき事故が集団練習中に発生していたとするならば、あるいは被害者側の過失の有無を論ずべきであろうが、しかし、原告静の属するグループがスキーの初心者でないことは上記のとおりであり、同女は、昼休みの時間になつて講習会が解散し、自由行動ができるようになつた後、A地点方向から斜滑降をはじめ④地点にいたつて本件事故に遭遇したことは前記認定のとおりであるのみならず、スキー講習会に参加した者が同会の解散後、一般のスキー客と同様にゲレンデで滑走してはいけないといういわれはなにもない。してみれば、本件事故は、集団練習中の事故でないことはもとより、指導員の監察統制の下にあるときに発生したものでもなく、全く原告静個人の自由時間中の事故であるから、みぎ集団練習場で練習しなかつたことと本件事故の発生との間には因果関係はないものというべく、したがつて、この点に関する被告らの主張は採用することができない。

つぎに、被告らは、原告静がスキーの初心者であるにかかわらず、斜滑降をし、あまつさえ上方よりの見通しのきかない雪庇の陰に転倒した過失が本件事故の一因であると主張するから、この点について判断するに、原告静がA地点附近から④地点に向けゲレンデをゆつくり斜滑降したこと、および④地点附近は、③地点にある雪庇の陰になつている場所であつてみぎ雪庇の方向からは通常スキーヤーが滑降してこない場所であることは、上記認定のとおりである。ところで、斜滑降は、ゲレンデを横切る場合には左右に注意ができ、むしろ比較的安全な方法であるのみならず、④地点附近が斜滑降してはいけない場所であるとか、また、原告静が④地点にいたるまでの間に滑降してくる被告竹節を発見しえたと認めるに足る証拠はなにもないのであるから、原告静が雪庇の下である④地点に向けて斜滑降をしたことをもつて原告静の過失であるということはできないし、また、原告静が④地点において新雪につつこんで転倒し、しばらくして顔を左に向けながら起きあがろうとしたことも、転倒自体は何人も致し方のないことであるし、転倒後の措置にしても、転倒後起き上るときは、山麓の方向へ顔と身体を向けるのがむしろ通常があつて、そのために多少時間を要したり、③地点の方向からはめつたにスキーヤーが滑降してこないと思つてその方向に特に注意を向けなかつたとしても、このことをもつて原告静に被告竹節を発見して衝突を避けるにつき不注意があつたとは到底いうことができない。したがつてこの点に関する被告らの主張もまた採用することができない。

第一〇  結  論

以上のとおり、被告竹節およびその使用者である被告会社は、各自、被告竹節の不法行為により原告らの蒙つた損害金として、原告静に対し、得べかりし利益の喪失額金一、〇二九、一五七円および慰藉料金一、〇〇〇、〇〇〇円合計金二、〇二九、一五七円、原告忠三に対し、財産的損害額金二四七、五三四円および慰藉料金一五〇、〇〇〇円合計金三九七、五三四から同原告が損害補填としてうけ取つたことを自認する見舞金品計金三〇四、四九二円を控除した額金九三、〇四二円、原告茂子に対し慰藉料金一五〇、〇〇〇円およびこれらに対する不法行為の日以降であることが明らかである昭和三九年一月一日以降みぎ完済にいたるまで民法所定年五分の割合による損害金を支払う義務がある。

よつて原告らの本訴請求は、みぎ認定の限度において理由があると認めて認容し、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、 九二条、 九三条一項を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。(裁判長裁判官杉本良吉 裁判官土屋一英 筧康生)

原告忠三の財産的損害

(1) 原告静の医療費

(イ) 昭和三八年二月二三日より同年三月一一日までの北信総合病院における入院室料金四〇八〇円

(ロ) 同年三月一一より同月二三日までの東大病院における入院料金三九〇円、ならびに初診料外金一、四三四円

(ハ) 同年三月二九日より同年七月二九日までの尾本眼科における診療費、薬代および手術料金五六、二〇〇円

(ニ) 同年六月一一日の桜井クリニツク分室における手術料金四、〇〇〇円および薬品代金一、六八〇円

(ホ) 同年五月一六日より同月三〇日までの警察病院における入院費金六三、八七〇円

合計金一三一、六五四円

(2) 物品購入費

(イ) 北信総合病院への入院のための小物類必要品代金六、五一九円、マツトレス、シーツ等金六、九七〇円

(ロ) 東大病院への入院のための寝具代金一一、二〇〇円、および寝巻、羽織、着物代金八、〇〇〇円

(ハ) 尾本眼科よりのサングラス(特種)購入代金五、四五〇円

(ニ) 警察病院期間中の日用小物代金三、〇〇〇円

合計金四一、一三九円

(3) 看護人への日当および謝礼

(イ) 北信総合病院における加藤文子への付添ならびに布団借用の謝礼金一〇、〇〇〇円、川口きくのに対する付添謝礼金五、〇〇〇円

(ロ) 原告忠三の一五日間にわたる看護日当金一二、九〇〇円(一日八六〇円の割)

(ハ) 原告茂子の一七日間にわたる看護日当金一四、六二〇円(一日金八六〇円の割)

(ニ) 関本毅(原告静の兄)の一〇日間にわたる看護日当金八、六〇〇円(一日金八六〇円の割)

(ホ) 関順次の家業を放棄して被害者に付き添つてくれたことに対する謝礼金二〇、〇〇〇円

(ヘ) 関要吉に対する同様の謝礼金五、〇〇〇円

(ト) 東大病院における看護婦の付添料金一四、六三〇円および心付としての残額放棄分金三七〇円

(チ) 警察病院における看護婦の付添料金六、一五〇円および車代金五〇〇円

合計金九七、七七〇円

(4) 交通費

(イ) 東大病院への入院および通院に要したタクシー代金二、七三五円

(ロ) 尾本眼科への通院に要した地下鉄およびタクシー代金一三、五五〇円

(ハ) 警察病院の入退院の際のタクシー代金四八〇円

(ニ) 家族六人と見舞客の上野、湯田中間の急行二等料金三四、五三〇円

合計金五一、二九五円

(5) 通信費

(イ) 信州中野より東京への電話通話料金六、七二一円

(ロ) 東京より信州中野への電話通話料金六、九七〇円

合計一三、六九一円

(6) 医師への謝礼

(イ) 発哺診療所の照沼先生に対する贈答品代金一、二二〇円

(ロ) 北信病院の赤沢先生に対する贈答品代金二、五七〇円

(ハ) 東大病院脳外科の喜田村先生に対する謝礼金一〇、〇〇〇円

(ニ) 同院眼科の鹿野先生に対する謝礼金五、〇〇〇円

(ホ) 同院皮膚科の笹川先生に対する贈答品代金一、六〇〇円

(ヘ) 同院リカバリーの中村および石島両先生に対する謝礼各金三、〇〇〇円

(ト) 尾本眼科の尾本先生に対する贈答品代金四、二〇〇円

(チ) 警察病院の添田先生に対する謝礼金五、〇〇〇円ならびに同両病院の福田先生に対する謝礼金三、〇〇〇円

合計金四一、〇九〇円

(7) その他病院関係者らへの謝礼

(イ) 薬師の湯、帳場係に対する謝礼金二、〇〇〇円

(ロ) 北信病院の町田事務長に対する贈答品代金二、九〇〇円

(ハ) 東大病院紹介者相川氏に対する贈答品代金一、五〇〇円

(ニ) 同院紹介者新井氏に対する贈答品代金三、四三五円

合計金九、八三五円

(8) 見舞客への接待費

(イ) 信州中野のすゞらん食堂への食事

代支払分金七、八八〇円

(ロ) 湯田中有竹旅館の宿泊費金八、九七〇円

合計金一六、八五〇円

以上(1)ないし(8)の総合計金四〇三、三二四円

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